「生徒から見れば先生とは1対1、でも先生から見れば生徒とは1対多。」
だからといってこれを理由に生徒への心配りがおろそかになってはなりません。
お預かりした生徒全員が感動合格を成し遂げてほしい。
ひのき塾のスタッフの一人一人の顔は違えど、この1点については振れることはありません。
今回のブログは、先生側から見た合格体験記といえるかもしれません。是非、ご一読ください。
【昨年6月に入塾した生徒】
Aさん(当時小6)がひのき塾に初めてやってきたのは、去年の5月末、ちょうど1年前のことです。
ご家族3人でいらっしゃいました。
入塾テスト終了後、すぐに結果をお見せして、次のようにお伝えしたことを覚えています。
「素直で、まじめで頑張り屋さん。けれど、物事を考える材料が乏しい。」と。
テスト後の問題用紙を見れば、その子の勉強に関する取り組み方を想像することができます。
・一つのことをきちんと丁寧にしないと気が済まない性格。
・中途半端なことは嫌い。
だからかもしれませんが、小学校での成績はとても優秀です。
そんなAさんが、学校の先生から「中学受験をしてはどうか」と声を掛けられたところから塾探しを始め、ひのき塾にやってきてくれたのです。
「中途半端なことが嫌い」
これは、もろ刃の剣になることもあります。
「学校の勉強では、ほぼすべてを上手にこなすことはできるものの、中学受験の勉強のように、自分の力の及ばないことにぶつかったとき、その完璧主義が故に苦しむことにならないだろうか。」
という心配です。
勝負は秋だと思いました。
小6途中からの入塾は、精神的にも肉体的にも限界への挑戦となります。
受験用知識のバックグランドが何もないのですから当然です。
普段は、楽しく学習できていても必ず壁にぶつかる時が来ます。
お母様ともLINEでやりとりをしました。
「塾では気丈に振る舞っていても、家に帰れば毎日のように泣くので、やっぱり受験勉強を止めさせようか…」
と相談されたことも2回ほどありました。
「受験をしようと決めたのが本人なのですから、本人に任せてあげてください。」
「お母様もつらいかもしれませんが、お子様のお話しを聞いてあげてください。」
「毎日のおいしいご飯がご本人の精神的なサポートとなりますよ。」
というような返信をしたと思います。
そんな日々を送る中で、Aさんは、算数がいちばん好きになったようです。
作業ではなく、頭を使って一つの答えを導くことに喜びを感じたのでしょう。
少しずつ自信を深めていったようです。
逆に、小6の5月分までの暗記項目が抜けているため、理科や社会では苦戦の連続でした。
また、作文などの表現も苦手で、フリースペースを与えると、何を書いていいのかわからず、初めは、2~3行の文章を書くのが精一杯でした。
ただ、Aさんは、ほんとうに頑張り屋さんなのです。
小学校も近くはないのに、ランドセルを背負ったまま誰よりも早くやって来て、
授業開始までの1時間、黙々と自習に励み、
授業後は21時まで学習を続けていました。
「塾の方が、勉強がはかどるから。」ということで、自分で決めてご家族の協力を得ていたようです。
ひたすら勉強に打ち込む姿を見ていると、私も「がんばれ」と心で応援し続けました。
もちろん、順風満帆ではありませんでした。
11月ごろ、平日の夕方にお母様からLINEが入りました。
「今日、塾に行かないかもしれません。社会の暗記が全部できていないのです。」
完璧主義の気質がここに来て、むくりと湧いてきたのです。
当初、心配していたことが・・・と思いました。
今までどんなに辛いときでも休むことなく一心不乱に勉強に打ち込んできたAさんですから、それらをすべて打ち消すことにならないだろうか。
「たった1日休む」という小さなことではないような嫌な予感が・・・
信じて待つしかありませんでした。
来ました。
ちょっと暗い表情をしながらも、Aさんはやってきました。
そして、社会の小テスト。
結果は(点数は忘れましたが)惨憺たるものでした。
今まで準備を丁寧にすることで、小テストをクリアしてきた彼女にとっては、屈辱の点数でしょう。
授業後にそのテストについて、Aさんと話をしました。
「きちんと準備をしないと、こんな結果になるのはわかっているよね。けど、今日はよく来たね。」
Aさんは、目に涙をいっぱいに浮かべて、じっと話を聞いていました。
お仕事をされているお母様にも、「今日は、Aさんにとってとても大きな1日でした。」と、
塾に来てテストを受けたことをLINEで報告しました。
大げさかもしれませんが、Aさんが自らの力で壁を乗り越えた瞬間でした。
翌週、社会の再テストではしっかりと90点以上とりました。この頑張りは大したものです。
アタックテストでも同じようなことがありました。
10月度のテストでは、平均点に達したものの、11月度のテストではどの教科も平均点にやや足らず。
1か月後に受験を控えている時期に・・・。
この結果は堪えたかもしれませんが、落ち込んで何もしなくなるわけでもなく、悔しさをバネに勉強の手を緩めませんでした。
受験を間近にひかえ、どんどんと研ぎ澄まされた空気を醸し出すAさんを見ていると、
「きっとうまくいく。」根拠のない自信が私の中に芽生えてきました。
12月の冬期勉強合宿。
女子大模試でなんとベスト10に入ったのです。
初めて見る順位。
今までの半年の努力が一点に集約された瞬間でした。
そのとき、隣に座っていたのは、小6の夏期講習から入塾し、
同じように短期間での学習を余儀なくされたAさんの大切な仲間でした。
なんとその生徒も続けて名前が呼ばれました。
2人で喜びを分かち合う姿をみて、私も少し肩の荷が下りました。
そんな、Aさんが年明けに受験に挑みました。
結果は… 過去のブログに掲載しております。
受験は、子ども達を大きく成長させてくれます。