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★附天中令和6年度入試を占う①★
附天中の令和6年度入試を占うにあたり、新しくなった2次入試の検査問題を分析したいと思います。検査問題となって2回目の入試を終え、出題方式も固定化されつつあります。問題内容や難易度はどうだったのか?先日行われた、ひのき塾主催の中学入試説明会の資料の一部をご紹介します。
【検査Ⅰ 概況と対策】
<令和4年度>
大問2構成
大問1 電気のはたらき(回路・電磁石など)
大問2 天気の変化
<令和5年度>
大問3構成
大問1 総合問題(物質の分類・歯車の問題など)
大問2 発芽と成長
大問3 工作に関する問題
<傾向>
一昨年度とは異なり、大問1・3で図工に関する問題が多く出題された。
大問1
(記号問題1題 記述問題1題 作図問題1題 計算問題2題)
自転車の部品と理科・算数・図工を絡めた問題が出題された。基本的な理科の知識を使う問題は1問のみで、表の読み取りや作図、比の利用など多岐に渡って出題されており、対策の難しい問題となっている。理科・算数の基本的な知識だけではなく、身の回りの物や現象などを普段から考えておくことが必要となる。
大問2
(語句問題3題 記述問題2題 作図(グラフ)問題1題)
ハツカダイコンの発芽についての問題が出題された。対照実験への理解と表の読み取りができれば解くことが出来る問題である。
大問3
(記号問題3題 記述問題2題)
いろいろな材料・道具を使った工作の問題が出題された。一昨年度にはなかった図工中心の問題に算数の考え方を盛り込んだ問題であった。げんのう(かなづち)の使い方や工作過程における様子を想像して解く問題など、傾向が大きく変わった印象を受ける。
<対策>
理科の範囲は依然多く出題に関わっているので、理科の知識は必須。また、表や図の読み取りや、表またはグラフの作成も必ず出題されており、練習量を増やす必要がある。
大問3のように図工中心の問題に関しては、対策が難しいと思われるが、学校の教科書をしっかり読んでおき、道具の使い方とその注意点などは覚えてから試験に臨むようにする。
【検査Ⅱ 社会(地理分野)傾向と対策】
(1)問題数、時間・配点
・令和4年実施入試問題(試験時間40分 配点70点)
大問数:2(大問1が地理分野、大問2が理科分野)
問題数:24(大問1が12問、大問2が12問)
※解答記入数で問題数を数えているため、過去問掲載数と一致しない場合がございます。
・令和5年実施入試問題(試験時間40分 配点70点)
大問数:2(大問1・2ともに理科・社会の融合問題。一部、家庭科の問題も出題)
問題数:26(大問1が12問、大問2が14問)
※解答記入数で問題数を数えているため、過去問掲載数と一致しない場合がございます。
なお、令和6年実施の入試問題に関しては、入試科目に体育が再採用される関係で、試験時間は変わらないが配点が70点から60点に変更となる。
(2)傾向と対策
①傾向
令和4年度入試より、試験の形式が従来の科目別から教科融合型の検査となり、社会の地理分野と理科が検査Ⅱで融合問題として出題されるようになった。また、令和5年度では、地理分野・理科に加えて家庭科に関する問題も出題されており、より一層融合問題の色合いが濃くなっている。私立中入試の適性検査型の問題に近くなったように思えるが、内容に関しては知識(用語など)を問う問題もでている。しかし、国立中に多い説明偏重の問題形式というわけではなく、知識・説明・作図などバランスのよい問題出題となっている。
②対策
―1 知識を問う問題に関して
従来通り塾のテキストや学校で使用している教科書、私立中学の過去問演習で対応可能ではあるが、細かい知識の記述は要求されていないので基本としておさえるべき用語しっかりと学習し定着していれば対応できる。
―2 説明を問う問題に関して
結果だけの記述ではなく、その過程(因果関係など)を説明していく必要がある。そのため、成立要因や結果につながる原因・事象、特に地理分野においては気候の特色であったりその土地の文化であったりが影響する場合もあるので、都道府県の大まかなイメージに加えて特色をおさえておく必要がある。
―3 資料読み取り問題に関して
資料から読み取るので、選択肢との照らし合わせが必要となってくる。問題に条件が書かれている(例:○○県のこととして など)場合は選択肢で明らかに正しいもの(あるいは、あきらかに間違っているもの)を吟味して選べればよい。その際に、上述している知識を問う問題が判断材料になることもある。
単純な資料読み取り問題の場合は、まず何についての資料なのか、問われているのは割合なのか金額なのか、など誤答選択のパターンがあるので正確な読み取りが必要となる。
―4 作図問題に関して
グラフ、表などどのようなものがあるかを把握しておく必要がある。令和5年度入試ではなじみのないドットプロットの作図の問題が出されているが、過去には雨温図から選ぶ問題もあり、他の国立中入試では雨温図を一部作成する問題も出題されている。どのような場面でどのようなグラフや表であらわすのが適切であるかを理解し、またそのように選んだ理由まで説明できるように準備しておく必要がある。
≪入試問題例≫
令和5年度 大問1(4)Ⅰ・Ⅱ 知識を問う問題の例
(4)下線部dについて、次のⅠ・Ⅱはかつて東海道が通った都道府県のについて述べたものです。それぞれの都
道府県名を答えなさい。
Ⅰ 石油化学工業がさかんで、かつて四日市ぜんそくが社会問題となった。 解答:三重県
Ⅱ 自動車の生産がさかんで、また渥美半島では電照菊の栽培がさかんである。 解答:愛知県
<解説>
Ⅰについて
問題文に「東海道が通った都道府県」とあり、「石油化学工業がさかん」とあるので日本の工業地帯・地域の
うち近畿~関東地方の太平洋側の県が該当する。問題文の後半に「四日市ぜんそく」とあるので、三重県が正
解となる。なお、三重県に関しては中京工業地帯の西端、臨海部に石油化学系の工場もある。
Ⅱについて
問題文に「自動車の生産がさかん」とあるので、日本で自動車生産がさかんな地域はいくつかあるが、東海
道が通った都道府県となると、おおよそ愛知県と予想される。問題文の後半で「渥美半島では電照菊の栽培が
かさん」とあるので、正解は愛知県となる。なお、愛知県は中京工業地帯の中心で自動車メーカーのトヨタの
本拠地であり、菊の栽培は愛知県、沖縄県の順となっている。
令和5年度 大問1(3)資料読み取り問題の例
(3)下線部cについて、資料1と資料2から読み取れることを、次のア~エから1つ選び、記号で答えなさい。
ア 1997年から2021年の個人のインターネット利用率は増加し続け、
2021年のパソコン利用者の割合は、家庭用ゲーム機利用者の割合
の2倍以上となっている。
➡「増加し続け」が間違い。資料1では増加傾向ではあるが、減少
している年もある。
イ 2021年では、個人のインターネット利用率が2001年の約2倍に
なっており、スマートフォンの利用も増加している。
➡前半は「約」がついているので許容範囲としても、問題文後半で、
「スマートフォンの利用も増加している」が資料からは読み取れ
ない。資料2では2021年のみの結果であり、他年度比較は困難。
ウ 2021年では、個人のインターネット利用率が8割をこえており、
利用端末はスマートフォンが最も多い。
➡正解
エ 個人のインターネット利用率は今後も下がり続け、タブレット型
端末の利用が増えていく。
➡問題文前後半共に資料からは読み取れない。
令和5年度 大問2(5)① 説明を問う問題
(5)①
高知県の冬が温暖である理由を「季節風」と「海流」の語を用いて説明しなさい。
解答例
高知県は冬の北西の季節風が四国山地にさえぎられ、また沿岸部を暖流である日本海流が流れている影響も
あり冬でも温暖な気候になる。
典型問題としては、夏の太平洋側の気候や冬の日本海側の気候を問う問題で「季節風」、「海流」の語句を用いての説明が多い。今回は、冬なので「季節風」の影響を受けない理由と温暖になる理由を書く必要がある。四国地方は、中央部に四国山地があり、冬の北西季節風の影響を風下にあたる高知県はあまりうけない。また、沿岸部を暖流が流れているため温暖な気候となる。反対に夏は南東季節風の影響を受け、また四国山地で雨雲がひっかかるので降水量が多くなる。
典型問題の逆を問う問題であり、典型問題からいかに予測を立てて説明できるかが解答のポイントとなる。
【検査Ⅲ 傾向と対策】
〈令和5年度〉
大問1~4
〈大問1〉
沖縄県についてのテーマに基づいた出題であった。出題構成は音楽、歴史、図工の融合形式である。
沖縄民謡の「谷茶前」の楽譜より、音楽記号、楽譜中の音楽記号と同じ高さ、同じ長さの音をヘ音記号の楽譜に記述させる知識をベースとしたものから、資料を参考にして、琉球音階と西洋音階の違いを説明させるものもあった。
歴史分野は、資料を見て、世界遺産「首里城」の名称を答えさせる問題や、沖縄県特有の文化が生まれた背景を2つの指定語句(「琉球王国」「中国」)を使用して説明する記述問題が出された。さらに、沖縄返還協定に関する史料から、サンフランシスコ平和条約やアメリカ軍基地を答えさせるものもあったが、いずれも標準的なレベルのものである。大問1の最後の問題は、地形図のある地点(X)から、矢印の方向を向いた景色を、条件2つを参考にして描かせる独創的な観点の出題も見られた。
(総評)
知識を問うものばかりではなく、記述問題も出されている。「沖縄県」というテーマに絞った出題は今年度が初めてだったが、標準的な出題であると言える。特に音楽に関する知識や図工の実技に関する問題は、関連問題に取り組むなど対策が必要と言える。
〈大問2〉
ブラジルについてテーマに基づいた出題であった。ブラジルで一般的に使用されている言語である「ポルトガル語」を答えさせる問題や、白地図よりブラジルの位置を答えさせる問題は、一般的に中学生レベルと言える。また、ブラジルで有名な祭りであるカーニバルや、その祭りがキリスト教に関連するものであるという知識は高レベルである。大問2の中でも音楽に関する問題が出題された。資料で示された楽譜について読み取れる特徴を問うものであったが、音楽的知識が十分備わっておく必要があり、読み取る力だけではなく、知識と結び付けることが大きく求められたといえる出題と言える。さらに、ブラジルはたばこの葉の生産が盛んであることから作問された保健分野の問題では、たばこの煙に含まれる有害物質名を答えさせたり、喫煙に関わる「副流煙」「主流煙」を答えさせたりする問題、喫煙に関して正しい説明文を全て選ぶ問題など、喫煙という特定の分野における知識を求める問題が出された。
(総評)
世界の国に絡めた令和5年度入試の出題形式は新しい。日本国内の地理的分野の知識のみならず、世界の主要な国々に関連する地理的分野の知識も少なからず問われたことや、保健分野や大問1に続いて音楽分野が問われたことも、日頃、幅広い知識を習得する学習が求められることは必須であると言える。
〈大問3〉
会話文に絡めた図工分野のみの出題であった。会話文中では、緑色や紫色をつくるために必要な絵の具の色を答えさせる問題や、筆の使い方について、資料で示された筆洗の適切な箇所を問う問題が見られた。
(総評)
図工分野は大問1で実技、大問3で知識を問う形式をとっていた。大問3で問われた図工分野の問題は、知識をベースとした学習が必要であることが分かる。大阪教育大学附属天王寺中学校の過去問に類似した問題も見られるため、過去問演習も入試対策の1つとして取り入れたい。
*ひのき塾オリジナル中学入試レポートより抜粋